2024/05/05 03:17 |
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2011/09/14 18:35 |
羅刹化の報い。 |
件の右目喪失(今ブログで散々ネタにしているアレ)により、相坂、変若水(おちみず)を飲んでしまいました。
変若水(おちみず)とは
『薄桜鬼』に登場する西洋伝来の紅い飲み薬(エリクサー)。
驚異的な傷の回復や筋肉の増加による戦闘能力の増加と引き換えに、突然の吸血衝動に苛まれる、
太陽が大敵となるため昼間の行動が制限される、そして力の発動とともに寿命を縮めてしまうという悲劇的代償を
負ってしまう。
その代わり眼帯が外れたのでこんな風にかわいい服も着ることが出来るようになりました。
昼間が行動できず、夕方にようやく動き出すことが出来る。
外見としては髪がシルバーブロンドになり、瞳が真っ赤になるところが挙げられる。
羅刹は夜にこそ動ける。
逆を言えば昼間ではただの人間だけど、夜になれば悪魔的な戦闘能力を保持できる。
ただし『暴走』してしまうともう殺すしか方法はなくなる。
未咲。もしあたしが暴走してただの殺戮の悪鬼になってしまったときは。
容赦なく胸を刺して殺しなさい。
2011/09/14 10:54 |
第2話 -Deadly more better- |
鎮撫隊がタルティーンとその周辺のインフラを完全に鎮圧・確保し、タルティーン公の資産をすべて押収。
トキールの指示によりタルティーンはそれまでの城塞都市からさらに防御を強固なものにした『要塞』に。
烽火台も四方に増設され、敵の襲撃に備えエイリフ国軍の歩兵師団が駐留を開始した。
そんな折だった。
「ほう。まだこの近辺にも骨のある諸侯がいたなんてね」
司令部にて、届いた書類を一枚一枚確かめつつ、気になるソレを見つけたトキールがほくそ笑む。
「はっ。心底腐り切った最低の軍団です。いかがいたしましょうか」
その書類というのは、制圧の完了したタルティーンの郊外に『自由都市ダンバートン』の領主、マックス"フュルスト"デトワイラーの
雇われ義勇軍1000名が突如駐屯を開始したというものだった。
「デトワイラーめ。おおかた、ダンバートンを攻めるなという意思表示か、この気に乗じてタルティーン銀鉱でも攻める気でしょ」
「はっ。向こうからは鎮撫に協力するという意思表示がありましたが、その割行商を襲い売り上げや物資を奪っております」
デトワイラーは筵折りの貧乏行商から身を興し、当時まだただの平原だったダンバートンに商人ギルドを設立。
破格のロイヤリティで商人たちを苦しめながらダンバートンを文字通りの自由商業都市に育て上げた男だ。
「汚い商売しながら自らをフュルスト(侯爵)だなんて。どこまで小児病なのよ」
書類の下には、こう追記する。
『逆賊に死を。エイリフ国軍第2歩兵師団に出動を命ず』
無論、署名と王の印璽が押された瞬間、それは絶対的な命令となる。
書簡はその日のうちに早馬でタルティーンに届けられ、第2歩兵師団長 ゲオルグ・アレクサンダー・フォン=メレンドルフは師団に出動を命令。
ネア湖目前の前線にキャンプする雇われ義勇軍の目前に迫るよう指示した。
「親分、誰か来やすぜ!」
「うるせぇっ、いまいいとこなんだよ!」
行商人の娘を強奪し、フックカットラスを首に突きつけながら犯す義勇軍の親玉。
膣にありったけの精を放ち、そのまま首を掻っ切って殺す。
「孕まれても困るからな。クハハ」
まだテントの前には裸で縛られた娘が4人。犯すメスはまだいる。笑いながらその娘の亡骸を蹴り飛ばし、
皮袋から、娘の血より薄い赤のワインを器に注ぐと。
「ナニをのんきなことを!すんげぇのが来ましたよ!」
「アホかぁ。俺たち1000人の義勇軍様の前に敵は…ッ!」
商人から強奪した双眼鏡を覗く親玉。その光景に唖然とする。
数千の松明が灯され、その大軍が義勇軍の正面に押し寄せてくる。既に右翼前曲に展開していた義勇軍200『匹』は
虐殺を開始されており、逃げ惑うもの多数。雨あられと降り注ぐ火矢が前線のキャンプを焼き払い、体中矢だらけの
ハリネズミにされた兵が逃げ惑う。それを笑いながら斬り殺す狼たち。彼らの黒い軍服は。
「…エイリフだ。エイリフ国軍だ!」
槍(パイク)兵が槍衾突貫を繰り返し、ホンモノの戦争に慣れていない義勇軍は次々敗走。右翼は完全に崩壊する。
土下座して降伏を申し出る右翼指揮官は瞬時に首を刎ね飛ばされ、商人の娘と同じ末路をたどる。足蹴にされる、首のない死体。
その兵力、師団兵力の本部防衛戦力を除いたとしても、8500人。
更に左翼からは最新式の鉄砲『ゲベール』を大量に装備した近衛猟兵第10連隊-ファランクス・イェーガー-が強襲。
左翼に展開していた義勇軍は右翼・本陣隊と違い常に戦線の前方で奮闘していたため戦闘経験も豊富にあったが、
激しい音とともに飛び交う鉛弾の前には。
次々に死傷者を出す中、前線と本陣の中腹に砲撃が始まったのは、2315時のことだった。
「黄燐弾だ!」
「燃える!燃えるゥ!」
黄燐と油脂が放つ強烈な臭いとともに、前線と後方を保つための補給路が炎の壁で分断される。
既にこの時間で前線の両翼は壊滅的打撃を負い撤退中。だが撤退を許さないこの焔の壁と、迫り来る精鋭。
投降を決めた左翼指揮官もまた、先の右翼指揮官同様、剣でそのカラダを木に串刺しにされる。
「お、親分、逃げましょ。このままじゃ、このままじゃ…」
「お、おう、おう…」
所詮部下はデトワイラーから貰った雑兵だ。補充は効くし、姿くらませばこっちのもの。
だけど、腰が抜けて立ち上がれない。動きたくても動けない。黄燐弾は次々に打ち込まれ、その有毒ガスで声も出ない。
「お、やかた…」
ドサッ。部下が一人、また一人倒れていく。最悪なことにこちらは風下。有毒ガスから逃げる術などなく。
「う、おおおお…」
顔がたちまち青くなり、そして。
彼もまた、ピクリとも動かなくなった。
「フュルスト、何か届いていますよ」
「おうおう。商人からの貢物だろう。よきに計らえ」
「はっ。では…」
丁寧に包装された何かのビンのリボンを解くと…。
彼は、顔面蒼白になった。
「…」
嘔吐。
義勇軍の親玉の首級が、ホルマリン漬けで贈られてきたのだから。
『臣下の礼を取らぬ逆賊は、このような目に遭うことになる。今すぐ恭順せよ』
トキール直筆の手紙が彼の眼に入ると、エセ侯爵は顔を真っ赤にして。
「抵抗じゃ!徹底した抵抗じゃ!」
書簡を破り捨てる彼。しかし、命知らずに付き合う義理はない。
その晩のうちに、彼の側近の半数が、家族をつれダンバートンを離れたという。
【戦闘詳報】
参加部隊:エイリフ国軍第2歩兵師団および近衛猟兵第10連隊 総数10200名
戦死:6(ただし味方の誤射によるもの4名)、負傷50名、行方不明:0名
敵戦力:ダンバートン雇われ義勇軍 総数1000名
戦死:966名、捕虜4名、行方不明:30名
1915時 戦闘開始。
1944時 右翼前曲の雑兵壊滅。
2032時 左翼全面が近衛猟兵の攻撃を受け敗走開始。
2122時 両翼が壊滅し敗走を開始。
2248時 砲兵隊に黄燐弾が到着、前線の全兵力に後退を下命。
2250時 その様子を見た生存部隊の一部が国軍に反撃、同士討ちが一時発生する。
2315時 黄燐弾第1弾が前線と後方を分ける細道に着弾。
2338時 この頃、本陣周辺にも黄燐弾が着弾。本陣にいた者たちはこの前後に死亡したものと推測される。
0218時 生存していた義勇軍生存者4名が降伏し、戦闘終了。
2011/09/08 16:17 |
軍の設定についてちらっと。 |
【国軍兵科】
軍服のライン(パイピング)の色によってその人の所属兵科が違います。
(国軍ごっこしたい人はぜひ参考にしてください)
貴重なカラー写真で残っているのは、歩兵科の軍服を纏ったトキール公。
パイピングは白。この兵科は歩兵のため、伝令兵以外は馬に乗ってはいけません。
装備は全員漏れなく剣を装備すること。
・下級兵士(兵)は全員ロングソードとラウンドシールドを装備しています。
・中級兵士(下士官)はトゥハンドソードが多い。
・上級兵士(将校)は基本支給されず自前。そのため伝家の宝刀を使うものも。
なおこの兵科には弓兵も含まれる。
青のパイピングは攻城兵器や破城兵器を装備している『戦闘工兵科』です。
1600年代ではエイリフ国軍しか有しておらず、エイリフが短期間にウルラを征服できた影に、
彼らの活躍があるといわれています。
・攻城兵器隊
投石器や移動式櫓など、壁を乗り越える兵器を扱います。
また投石器には敵の密集隊形を一掃する『サジタリウス』も装備されています。
・破城兵器隊
遠投投石器(ゴッド・オウン・スリング)など、敵の城壁を完膚なきまでに破壊する兵器を装備しています。
牛の死体を投げ込んで敵城内の衛生状態を悪化させるなど、地味ながらも重要な仕事も彼らが請け負います。
・突撃工兵隊
上記写真のように突撃用ランスを装備し、防備の手薄になった城門を強行突破する場合もあります。
・野戦築城隊
前哨陣地や野戦防御陣地を構築する任務を請け負います。
・爆破隊
Bボタンですべてを爆破!敵の侵攻を食い止めるアイスマインなども彼らの重要な装備です。
こちらは前回登場の騎兵です。赤のパイピング。
騎兵科にはハサー’(軽装騎兵)と重装騎兵、そして近衛隊が存在します。
・ハサー
軽装騎兵とか竜騎兵と訳されます。防御力4以上の軽鎧(タラ歩兵鎧が基本)を装備しています。
集団での騎兵戦術で前線部隊と後方部隊を分断することが大まかな仕事です。
・重装騎兵
防御力6以上の重鎧(基本的にはバレンシアクロスラインプレートアーマー)
を装備して、浸透戦術で分断された敵前線部隊を掃滅する花形職種になります。
・近衛隊
第16騎兵連隊がまさにそれにあたります。鎧を着けないため前線ではなくあくまで本陣の防衛や、
パレードの際に活躍します。
【他に…】
流石に相坂の軍服も数に限りがあるので残りの兵科をぱっと紹介します。
・衛生科(パイピング:紫)
野戦病院を運用する隊と前線に従軍する衛生兵の部隊に分けられます。
従軍資格としてはヒールランク9、応急治療ランクA以上という基準が定められてます。
・会計科(パイピング:緑)
国軍の財布役。兵の給与や部隊装備などの調達が彼らの仕事です。
一件楽なように見えて計算が1ゴールドでもずれていると即座に横領とみなされ禁固2ヶ月が課せられる、
とても厳しい職場です。
・情報科(パイピング:黒)
完全黒尽くめ。普段は私服で街や敵の情報を探り、掴んだ情報を分析・解析して報告する『スパイ』。
エイリフ王国初の大規模激戦となったダンバートン攻防戦で活躍したとされている。
・錬金科(パイピング:オレンジ)
エイリフ王国は早くから錬金術の戦闘の有効性に注目しており、専門の兵士を雇っている。
なお『王政錬金術師』という、人間兵器も存在している。国軍最悪の残虐行為とされる『バンホール殲滅戦』で初めて、
王政錬金術師が戦闘に投入され、多くの民間人が虐殺された。
(トキールに流れ矢を浴びせた兵士の故郷がバンホールだったため、とされるが定かではない)
・慰安科(パイピング:ピンク)
女子のみの兵科。エイリフ国軍は全軍に先駆け早い段階で従軍慰安婦制度を整えていた。
戦場にも付いて行くため死傷率も高いものの、給料が全軍で一番高いため、志願倍率もそこそこ高い。
しかし、当時はまだ避妊の観点がなく(むしろ避妊具を使用することは神への冒涜とされていた)、
戦場での死傷より妊娠、性病による女性機能、慰安婦としての価値の低下が恐れられていた。
ただしこの職種から伯爵夫人などになったものも決して少なくない。
2011/09/08 07:57 |
戦況速報。 |
おはこんばんちおっぱい!相坂です。
さぁ、相坂の分身ことトキールがナニをやらかしているかというとそのための戦況速報。
殆どウソ日記だから気にしなくていいよ。
【タルティーン公エルンスト伯処刑】
エイリフに弓引く逆賊を、コリブ渓谷防衛戦において完膚なきまでに壊滅させ、逆賊はタラに連行。
正門に逆さ吊りにされ処刑されました。なおその死体はウジが湧き、カラスが食い尽くすまで放置。
一部民衆から疑問の声が上がったものの、文字通りの鳥葬を行ったとの事。
同時にタルティーン公は暴君トキールが兼任。後日正式に選出するとの事ではあるが、侍女長いわく。
『本人その気まったくなし。タルティーンは各地に侵攻するための重要拠点だ』として誰にも譲る気ないそうな。
【逆賊遺体埋葬禁止令発布】
もう一つ、タルティーン・タラ間の重要な通路であるコリブ渓谷に横たわる敵軍兵士の遺体の問題がある。
腕や頭が千切れたものや、焼かれたもの。あらゆる遺体の埋葬がトキール公の発布した法律により禁じられている。
これは水が綺麗なコリブ渓谷の衛生問題に発展しかねないのだがトキールは。
『逆賊がどういう末路を迎えるか、しっかり目に焼き付けさせ、二度とエイリフに謀反を起こさせないようにする予防策』として、
軍首脳部の意見をすべて却下した。
行商たちからはおっかなくて安心して商売が出来ないとする声もあるが、さすがにトキールも哀れに思ったのか、
タラ・タルティーン水源間の定期便(渡し舟)を20年ぶりに再開させることを決定。商業物流面での問題はない様子。
【今後の方針策定】
今1ヶ月間の主要方針が策定され全軍に発令される。
・タルティーン要塞:専守防衛
打って出ることを一切禁止し、他国の接近あらば城門を完全に封鎖した上で篭城策を選ぶこと。
なお食糧備蓄は1年分用意してあるものの質素倹約を旨とし、無駄をもたらした指揮官は反逆者として鋸挽きの刑に処す。
・コリブ渓谷:専守防衛
コリブ渓谷には前哨陣地を2箇所(詳細位置は軍機により未公開)設置し、他国のタラ侵攻を食い止める。
・タラ:専守防衛
税金を準戦時体制として徴収する(戦債)。ただし所得税や食料・生活必需品への消費税を当面緩和・免除する。
国民、18歳以上の男子に課していた徴兵制度を16歳に引き下げ(16歳~18歳は国土防衛隊、18歳以上は正規軍編入)、
女子の軍志願も更に枠を広げた。
不足すると予想される収益に関しては新たに『貴族税』を導入。これは名門貴族家の『家名』そのものに税を課し、納税
しないのであれば貴族としての地位や権利を剥奪するというもの。貴族からの猛烈な反発が予想される。しかしトキール曰く
『お金は持ってるヤツから多く取り、貧しい人からは少ししか取らないのが基本。文句があるなら軍団引き連れてかかってこい』
との事。
【雑記】
ここのところ不必要に『狼が出たぞぉ!』と騒ぐ少年がいるとの事。
その都度軍が出動し騒ぎになっている。この事件の犯人であるティルコネイルの羊飼い、デイアン少年についてトキール公。
『即座に逮捕し大衆の面前でギロチン刑に処せ』と命令。現在タルティーン憲兵隊がティルコネイルのダンカン村長に対し、
狼少年デイアンの引渡しを要求している。
【写真】
1600年代ではとても貴重とされるカラー写真で撮影された軍議中のトキール公。
エイリフ国軍の軍服に赤いラインは第16騎兵連隊『シュヴァルツァーイェーガー』の名誉連隊長の軍服と分かる。
なおトキール自身は同連隊に所属したことはない。あくまでエイリフ王家の名誉称号のようなもの。
(第16騎兵連隊はエイリフ王国成立後の周辺各国との紛争で名を馳せた名門部隊)
2011/08/30 01:56 |
第1話 -Deadly bloody- |
軍部がエイリフ王国の全権を掌握し、一月が経った。
『臨時ニュースをお伝えします。臨時ニュースをお伝えします。コリブ渓谷でエイリフ国軍に対し最後の抵抗を試みていたタルティーン公エルンスト軍、500名が、無条件降伏を受け入れ投降しました。国軍1万の圧倒的大攻勢に対し戦線を維持できなくなり、謀反の終焉を決意したとの事です!』
タルティーン公エルンストは元来、タルティーンを治める荘園貴族。当然のことながらタルティーン郊外にある銀鉱の採掘権を有している。弟を半ば放逐し国家と兵馬の全権を握ったトキールにとって、財政再建と富国強兵のためには何より先に金銀の採掘権を完全に掌握することが優先事項だったのだ。
無論、その権利をおいそれと寄越すような貴族はいない。1個師団の指揮権と、新たに開梱されたばかりの荘園の無償譲渡を提示したが、足元を見すぎたのだろうか。彼はトキールに対し、自らを摂政にするように、という無理難題を条件として提示し、この時点でトキールの逆鱗に触れていた。
『逆賊エルンストを討伐せよ』
半ば奇襲攻撃のような戦いが始まったのは、1週間前。コリブ渓谷で鹿狩りを楽しんでいたエルンストの背後を、正規軍採用と金銀を条件にした裏取引で参加した傭兵部隊が急襲。エルンストは直ちにタルティーンに馬を走らせ、駐屯していた5000名の兵力をコリブに突貫、傭兵部隊を壊滅状態に追い込んだ上で合流に成功し、タラを目指そうとしたが。
思えば、それ自体がまさしく『囮』だったのだろう。
後方での戦闘に気をとられているうちに、エイリフ国軍精鋭中の精鋭、近衛騎兵第1師団が既に正面と側面に部隊を展開させており、たちまちエルンスト軍は挟撃される。さらに最悪の状況は秘密裏に川を上り、後方に回り込んだ少数部隊がタールを撒いて火を放ち、後方を完全に分断してしまった。同時期、タルティーン銀山で労働者達のクーデターが勃発。悲運が重なり、エルンストはタルティーンに戻れなくなっていた。
挟撃と兵糧攻めで当初5000あった兵力は、日に日に落伍、脱走が相次ぎ、それでもエルンストを慕う兵士3500名近くは最後まで生命を賭した徹底抗戦を展開。しかし3日前、ついにエルンスト自身が新式武器『サジタリウス』の猛攻に晒され、左腕を吹き飛ばされる重傷。エルンスト軍の士気は大いに低下した。
サジタリウス。はるか東方の国から伝わった、『連弩』と呼ばれる武器がその原型となった機動兵器である。車輪を付けた、大型のボルトを発射する兵器は、一基から一度に35発の一斉掃射を行う。それが全面に20基。当然死傷者が相次ぎ、前線はたちまち瓦解。ついにエルンストは投降を決意し、軍使を送る。ただ最初からトキールは彼の降伏を一筋縄で受け入れるつもりはなく。
『兵自らの手でエルンストの首を取り、それを投降の証とせよ。さもなくば全滅するまで攻勢を掛け続ける』
兵たちは憤り、最後の総攻撃を敢行するよう提案。それを受け入れたエルンストが先頭に立ち、12時間前、最後の総攻撃がコリブ渓谷で実施された。既に疲弊し、空腹でボロボロの敗軍1200名は、一路血路を開くため正面突破を敢行し、従容として死を迎えた兵士達は、その遺体の埋葬も許されず、未だに渓谷を血とカラスの群れで埋め尽くしている。
総攻撃は失敗に終わり、改めて軍使が出頭。無条件降伏を受け入れ、停戦となった。
腕を亡くしたエルンストは首に縄をつけられ、前片脚を失った犬の如く四つんばいになるよう、というあまりに残忍な仕打ちを受けた。投降した兵たちが次々に連行され歩き去る中、彼は時速1kmなんてものじゃない速度で炎天下を歩かされる。犬のような姿で。脱水症状を起こすと馬用の鞭で死ぬほど叩かれる。そして水をぶっかけられ、また歩かされる。ついにエルンストは動かなくなる。可哀想なので馬に縄を縛り付けて、引き摺りながら走る。その過程で彼は人事不省の状態でエイリフ首都。タラの正門に入城する。即座に国軍総長のハインリッヒ・バルバロス・フォン=ユンキンゲン指揮の処刑部隊が既に死に掛けの彼の足に新しい縄を掛け、そして。
逆賊は、タラの正門に逆さに吊るされ、人々の怨嗟の声と唾の中で、その生涯を終えた。
「大総統閣下。無様なモンですね、あのゴミ虫は」
従卒は、黒い軍服…エイリフ国軍第16騎兵連隊…通称『シュヴァルツァーイェーガー』の名誉連隊長の軍服…に身を包む女性に話しかける。
「えぇ。とても無様。そしてその無様による怨嗟が、この国に新たなる血の紋を刻む」
双眼鏡から目を放し、ニヒルに微笑む彼女からは、寒気以上の何かを感じずにはいられない。
…それは、誰も信じなくなった憤怒の権力者と、それを取り巻く、世界の流れの物語。