忍者ブログ

マビノギブログ

くまさんサーバーの女帝こと時流さんが持ち前のドSな性格と執念をもってかき乱す物語。とりあえず、お前にレインボー。
RECENT ENTRY RECENT COMMENT
[05/30 相坂 時流]
[05/30 相坂 時流]
[05/30 相坂 時流]
[05/30 一条未咲]
[05/28 一条未咲]

2024/04/23
18:42
[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2011/08/30
01:56
第1話 -Deadly bloody-

 軍部がエイリフ王国の全権を掌握し、一月が経った。
『臨時ニュースをお伝えします。臨時ニュースをお伝えします。コリブ渓谷でエイリフ国軍に対し最後の抵抗を試みていたタルティーン公エルンスト軍、500名が、無条件降伏を受け入れ投降しました。国軍1万の圧倒的大攻勢に対し戦線を維持できなくなり、謀反の終焉を決意したとの事です!』

 タルティーン公エルンストは元来、タルティーンを治める荘園貴族。当然のことながらタルティーン郊外にある銀鉱の採掘権を有している。弟を半ば放逐し国家と兵馬の全権を握ったトキールにとって、財政再建と富国強兵のためには何より先に金銀の採掘権を完全に掌握することが優先事項だったのだ。
無論、その権利をおいそれと寄越すような貴族はいない。1個師団の指揮権と、新たに開梱されたばかりの荘園の無償譲渡を提示したが、足元を見すぎたのだろうか。彼はトキールに対し、自らを摂政にするように、という無理難題を条件として提示し、この時点でトキールの逆鱗に触れていた。

『逆賊エルンストを討伐せよ』

 半ば奇襲攻撃のような戦いが始まったのは、1週間前。コリブ渓谷で鹿狩りを楽しんでいたエルンストの背後を、正規軍採用と金銀を条件にした裏取引で参加した傭兵部隊が急襲。エルンストは直ちにタルティーンに馬を走らせ、駐屯していた5000名の兵力をコリブに突貫、傭兵部隊を壊滅状態に追い込んだ上で合流に成功し、タラを目指そうとしたが。
思えば、それ自体がまさしく『囮』だったのだろう。
後方での戦闘に気をとられているうちに、エイリフ国軍精鋭中の精鋭、近衛騎兵第1師団が既に正面と側面に部隊を展開させており、たちまちエルンスト軍は挟撃される。さらに最悪の状況は秘密裏に川を上り、後方に回り込んだ少数部隊がタールを撒いて火を放ち、後方を完全に分断してしまった。同時期、タルティーン銀山で労働者達のクーデターが勃発。悲運が重なり、エルンストはタルティーンに戻れなくなっていた。

 挟撃と兵糧攻めで当初5000あった兵力は、日に日に落伍、脱走が相次ぎ、それでもエルンストを慕う兵士3500名近くは最後まで生命を賭した徹底抗戦を展開。しかし3日前、ついにエルンスト自身が新式武器『サジタリウス』の猛攻に晒され、左腕を吹き飛ばされる重傷。エルンスト軍の士気は大いに低下した。
サジタリウス。はるか東方の国から伝わった、『連弩』と呼ばれる武器がその原型となった機動兵器である。車輪を付けた、大型のボルトを発射する兵器は、一基から一度に35発の一斉掃射を行う。それが全面に20基。当然死傷者が相次ぎ、前線はたちまち瓦解。ついにエルンストは投降を決意し、軍使を送る。ただ最初からトキールは彼の降伏を一筋縄で受け入れるつもりはなく。

『兵自らの手でエルンストの首を取り、それを投降の証とせよ。さもなくば全滅するまで攻勢を掛け続ける』

 兵たちは憤り、最後の総攻撃を敢行するよう提案。それを受け入れたエルンストが先頭に立ち、12時間前、最後の総攻撃がコリブ渓谷で実施された。既に疲弊し、空腹でボロボロの敗軍1200名は、一路血路を開くため正面突破を敢行し、従容として死を迎えた兵士達は、その遺体の埋葬も許されず、未だに渓谷を血とカラスの群れで埋め尽くしている。

 総攻撃は失敗に終わり、改めて軍使が出頭。無条件降伏を受け入れ、停戦となった。
腕を亡くしたエルンストは首に縄をつけられ、前片脚を失った犬の如く四つんばいになるよう、というあまりに残忍な仕打ちを受けた。投降した兵たちが次々に連行され歩き去る中、彼は時速1kmなんてものじゃない速度で炎天下を歩かされる。犬のような姿で。脱水症状を起こすと馬用の鞭で死ぬほど叩かれる。そして水をぶっかけられ、また歩かされる。ついにエルンストは動かなくなる。可哀想なので馬に縄を縛り付けて、引き摺りながら走る。その過程で彼は人事不省の状態でエイリフ首都。タラの正門に入城する。即座に国軍総長のハインリッヒ・バルバロス・フォン=ユンキンゲン指揮の処刑部隊が既に死に掛けの彼の足に新しい縄を掛け、そして。

 逆賊は、タラの正門に逆さに吊るされ、人々の怨嗟の声と唾の中で、その生涯を終えた。
「大総統閣下。無様なモンですね、あのゴミ虫は」
従卒は、黒い軍服…エイリフ国軍第16騎兵連隊…通称『シュヴァルツァーイェーガー』の名誉連隊長の軍服…に身を包む女性に話しかける。
「えぇ。とても無様。そしてその無様による怨嗟が、この国に新たなる血の紋を刻む」
双眼鏡から目を放し、ニヒルに微笑む彼女からは、寒気以上の何かを感じずにはいられない。


…それは、誰も信じなくなった憤怒の権力者と、それを取り巻く、世界の流れの物語。

PR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
URL
FONT COLOR
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら